夢よりも遠く、ドア一枚隔てて。

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 自分が開けようとしたドアが、ひとりでに開いたら。開けた先で、僕と鏡合わせのように、あの女の子がこのドアを開けようとしてくれたら。会いたかったあの子が、僕に会いに来てくれたと思えるような。僕になにかできることがあれば。あの時このドアを開けて、この部屋からいなくなってしまったあの子を引き止めることができたのだろうか。いつも水溜りを飛び越えようとするみたいに大きく歩く子だった。あの頃のくせ、あのままに近づいて、僕が広げた腕の間に飛び込んでくれたら。そう願ってしまう僕の気持ちが、夢という形でも叶ってくれれば。君を抱きしめたい。一度そうやって誤魔化した寂しさは、君以外を受け付けなくなってしまった。このドアを開けたら待っているのだろうか。僕がこのドアを開けて、君の方に行けば、君のようにここからいなくなってしまえば、また会いに行けるのだろうか。君に会いたいのに、君のようにはできない。
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公開:21/04/05 01:04

スイングラオス

小説を書く練習をしています。
 

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