銀色の桜

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「ねえ、銀色の桜って知ってる?」
遠い昔、彼女がその話を教えてくれた。
「桜ってね、満月の夜に一輪だけ銀色になる花があるんだって。その花びらを水に浮かべて飲むと幸せになれるって言われてるのよ」
馬鹿だな、たった一本の桜にどれだけたくさんの花が咲くんだよと呆れる僕に、彼女はぷっと頬を膨らませた。

「ぱぱ!このさくら、光ってる!」
頭の上で幼い娘が声を上げる。
見ると小さな手の先に、一輪だけ銀色に輝く桜の花があった。
僕は思わず夜空を見上げる。
ああ、今夜は満月なのか…。

もしもあの頃見つけていたら、君はずっと側にいてくれただろうか。
水のかわりに月の光に浮かべたら、散り急いでしまった君にも銀色の桜が届くだろうか。

「このさくら、ままにも見えるかなあ」
娘がぽつんと呟いたその時、ふうっと風が通り過ぎた。舞い踊る花吹雪の中のひとひらが、月の光に一瞬きらりと煌めいて、遠く夜空へ消えていった。
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公開:21/04/01 09:45
更新:21/04/08 09:54
#113 ラジオ朗読に採用されました 4月27日(火)20:00〜 『町田政則の語りの小部屋』 調布FM 83.8 お時間あれば ぜひお聴き頂けると嬉しいです

秋田柴子

2019年11月より、SSGの庭師となりました。
現在SSから長編まで幅広く書いております。

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞1回 入選2回
・SSG 空想競技コンテスト 入賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・SSマガジン『ベリショーズ vol.5,6,7,light』掲載(Kindle無料配信中)
https://www.amazon.co.jp/dp/B096821HSW

【近況】
 いろいろ書いてます(笑)

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