花筏の一寸法師

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花筏の花が咲いた。
青柳色の葉の上に
小さな花がひとつ。
すると花がさらに
開いて小さな少年が
現れた。

「お嬢さん、私は一寸法師と
言います。これから鬼退治に
行くので、針を一つ頂けませんか?」

「令和の世に、鬼はおりませんよ
それに針は日本刀の代わりでしょう?
銃刀法違反になりますよ。」

「じゅーとーほー違反?」

「代わりに爪楊枝を渡しましょう。」

爪楊枝を差し出すと、これは
木刀だと残念がったが
渋々受け入れた。

「お嬢さん、最後に葉を枝から
ちぎり取って、川に流して頂けないか」

私は言われた通り、川面に浮かべた。

「何度も言いますが
鬼はおりませんよ、どちらに行かれる
おつもりなのか」

「鬼は人の心に巣食うものですよ」
そう言って法師は川を下って行った。

残りの花筏も一つ二つと開花しそうだ。
鬼の数だけ一寸法師が生まれる?
「100均の爪楊枝でも買ってくるかな」
ファンタジー
公開:21/04/02 21:17
更新:21/04/02 21:18

翡翠工房( 石川県 )

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