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桜が満開のピークを過ぎた満月の夜、人知れず儚く咲く桜が「月桜」だ。
月桜は、濃霧のような春霞が立ち込める冷涼とした真夜中にだけ現れて、朝には花びらが散り葉桜になっているので、「幻の桜」と呼ばれている。
植物学者によると、月桜は、月見草と染井吉野が掛け合わさって突然変異でできあがったという。
また、天体学者によると、満月の夜にだけ月桜が現れるのは、月の満ち欠けが関係しているという。
さまざまな学説が唱えられているが、月桜の生態を知る者は誰ひとりいない。
夜桜見物で満開の月桜を愛でた者によると、薄紅色で上品だが、月光に照らされ神々しく咲く姿は、地球上のものとは思えず、まるでかぐや姫の化身のようだったという。
実は、かぐや姫が月に旅立つ夜も満月で、月桜が咲き誇っていたと伝承されている。
もしかしたら月桜は本来、月に生育する植物なのかもしれない。
その証拠に月桜の蕾の形は三日月にそっくりだという。
ファンタジー
公開:21/04/02 21:01
更新:21/04/02 22:58
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山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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