野良の妻
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深夜のアーケードを歩くようになって私の人生は変わった。アーケードといっても私が歩くのは地上ではなく屋根の部分だ。
アーケードの屋根にはそこだけに流れる野良の時間があって、往き交う人間も、動物も、地上にだけ生きていたら出会えないものばかりだ。
どこにいても均等に流れると思っていた時間も、屋根の上では伸びたり縮んだりする。昼と夜は常に点滅するみたいに入れ替わり、ランダムに過去と未来を繰り返す。
たとえば東京新小岩のアーケードには人間のかかとの角質だけを食べる猫が棲んでいて、剥がした角質から体内に入りこんでは、その人の心をざらりとした舌で舐め尽して人生を狂わしてしまう。舐められた人はきまぐれに味覚が変わり、性格も、目の色すらも変わる。
この地球でまだ人間が希少種だったころ、魔界は日常の中に含まれていた。
屋根で知りあった妻はときおり私のことを食べるけれど、それも野良の愛だから私は嬉しく思うんだ。
アーケードの屋根にはそこだけに流れる野良の時間があって、往き交う人間も、動物も、地上にだけ生きていたら出会えないものばかりだ。
どこにいても均等に流れると思っていた時間も、屋根の上では伸びたり縮んだりする。昼と夜は常に点滅するみたいに入れ替わり、ランダムに過去と未来を繰り返す。
たとえば東京新小岩のアーケードには人間のかかとの角質だけを食べる猫が棲んでいて、剥がした角質から体内に入りこんでは、その人の心をざらりとした舌で舐め尽して人生を狂わしてしまう。舐められた人はきまぐれに味覚が変わり、性格も、目の色すらも変わる。
この地球でまだ人間が希少種だったころ、魔界は日常の中に含まれていた。
屋根で知りあった妻はときおり私のことを食べるけれど、それも野良の愛だから私は嬉しく思うんだ。
公開:21/03/31 16:46
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