無人島で助けを求める男と紳士

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海で嵐に巻き込まれて、男は南国の無人島に漂着した。
なんとか水と食べ物は自力で手に入れたが、孤独だけはどうにもならない。
国へ帰りたい。
家族や友人に会いたいーー。

数ヶ月待っても、船も飛行機も近くを通らなかった。
それでも男は水平線の向こうへ叫んだ。
声が枯れるほどに。
「誰かー!助けてくれー!誰かー!!」
静かな海。
「声が小さあああい」
…!?
男が呆然と眺めていると、水平線の果てから誰かが泳いできた。
「おーい!おーい!」
男は何度も叫んだ!
もうただの衝動だった。
ぐっしょり濡れたスーツ姿の紳士が浜辺にあがってきた。
「来てくれて、ありがとう!」
紳士は男の胸ぐらを掴んで言った。
「だから声が小さああああああい!!!」
紳士は男を砂浜に叩きつけると、不満そうに海に入り、また水平線の向こうまで泳ぎ去っていった。

あとで救助の船が島に来た。
男は、なんとなく紳士に感謝したという。
その他
公開:21/03/31 07:42
例の紳士

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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