白黒つけなくても人生は素晴らしい

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確かに僕は白と言った。しかし店員が持ってきたのは黒いシャツだった。
「あのう、白いシャツが欲しいんですけど」
僕は店員が聞き間違えたのかと思い、もう一度言った。店員は手に持ったシャツと僕の顔を見比べながら怪訝そうに言う
「これが当店で一番白いシャツです」
明らかに黒いシャツだったが店員がそう言うのなら白なのかも知れない。僕はその黒い白シャツを買った。

家に帰ると恋人が「あら素敵な白シャツね」と言った。やはりこれは白いシャツなのだ。
試しに紙にペンで文字を書く「何色に見える?」
彼女は「何?心理テスト?」と笑いながら「黒でしょ」と答えた。

なるほど。よくわからん。

考え込む僕をよそに、彼女は夕食の準備を進める。
「今日は鶏肉たっぷりのシチューを作ったの。もうおなかぺこぺこ」
僕は食卓に置かれたシチューを見た。
これは一体どっちのシチューだろうか。
一口食べる。
美味い。それでいいんだ。
その他
公開:21/03/27 23:22

小川さら

口下手で面白い事が言えません。
だから書いてみます。

忌憚のないご意見をお待ちしております。
 

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