無意味な細菌

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教授は自分が発見した細菌を愛していた。この細菌は、グリスなどに使われる鉱物油を食べる奇妙な性質を持っていた。
グリスとは、機械の潤滑に使用される油で、あらゆる機械に使用されている。特に回転軸に支えるベアリングには欠かせない。
教授の細菌は、機械文明を下支えしているグリスを分解してしまう。しかもどんなに小さな隙間にも入り込むので、タチが悪い。この細菌に感染した機械は、じきに動かなくなってしまう。
この細菌はいままで地底奥深くに住んでいたので問題なかったが、これが外部に流出したら大変なことになる。研究者たちは破棄を迫ったが、教授は首を縦に振らなかった。
そして、この細菌をどこかに隠した。

この教授の細菌が、二百年後に勃発する人類対ロボットの最終戦争において秘密兵器となることは、まだ誰も知らない。
SF
公開:21/03/27 18:05

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