旅路の終わりに

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「そった、悲すそうな顔すねで」
彼女は僕の方をじい、と見た。
「なっきゃ、悲すくねの?」
「悲すいよ、そりゃ」
「本当さ?」
「嘘だきゃづいだって始まねさ」
幼馴染の彼女と僕。運命は残酷だが、そんなことは知っていたはずだろう? 僕たちは生まれたときから、いずれ分かたれる運命だったんだ。この期に及んで、それをどうこう言ったってしょうがない。
「すかだのねごどだよ」
「いやよ、わっきゃいや」
びりびりと覆いの剥がれる音がする。大きな手が僕を掴んだ。
「いがねで、いがねでけ!」
泣きながら叫ぶ彼女は、またたく間に遠ざかっていく。僕が先に行くよ。
体がバラバラになっていく感覚。でもまだすぐそばに、彼女の体温を感じた。
「ほら、いづまでも一緒だよ」
僕は目を閉じて微笑んだ。

消えていく意識の隅で誰かの声を聞いた。

「このにんにく、焦げ付いちゃってとれないよ、二つ重なってるし、鉄ベラどこだっけ?」
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公開:21/03/28 23:00
更新:21/03/28 22:28

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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