メルヘン。

　四十歳、僕は初めて合コンに参加した。だが誰も僕の領域に踏み込むことはなかった。そして一言も発することなく合コンは終了することになった。この世の中自分の領域を持っている人は少ない。この前見たＣＨＩＬＤのＴシャツを着た無垢な女の子はそれを備えていた。そして僕もそんな領域を持っていると自負していた。
　そんななか僕はどんどん領域を広げていこう、そう考えるようになった。そして僕はプロ野球選手になった。メルヘンの世界でだ。ピッチャーはミッキーマウス、キャッチャーはスヌーピーだ。僕はセカンドを守る。背番号はもちろん４だ。
　背番号４を背負う僕はＣＨＩＬＤのＴシャツを着た無垢な女の子と仲良くなった。この子は親から虐待されていたそうだ。僕はそれを不憫に思い、この子を引き取ることにした。そしてミッキーマウスやスヌーピーに囲まれて嬉しそうだ。僕は一生この子とこのメルヘンの世界で生活することを決意した。