桜蘂降る記憶

8
4

私は満開の桜より
潔く散り、大地に散乱した
桜蘂(さくらしべ)を
見るのが好きだ。

蘂に残された
花弁の一片を手に取ると、
花見客の残した記憶が
映し出される。

花曇りの桜の木の下で
二人は静かに立っていた。
遠くで踏切の音が聞こえてくる。
子供が春の歌を歌う。
紋白蝶が、微かに呟く。

ただそれだけの
記憶だった。

私は、そっと蘂を地面に戻し
両手を上げると深呼吸をした。
その他
公開:21/03/28 13:22

翡翠工房( 石川県 )

時の栞・翡翠工房(かわせみこうぼう)

早すぎる時の流れに栞を挟みたい
一日一日が特別な日になるように

趣味は 俳句、写真、イラスト作成
ヘッダー画像は自分で撮っています

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容