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「ほ、本物だぁ……」
男は手を震わせてそういった。
夢にまで見た金の山がそこに存在したからだ。
「やった。俺はやったぞ」
男は喜んで喜んで、もうなにがなんだかわからなくなっていた。

「不思議なものだ」
「ええ、なんというか、気味の悪い……」
部屋で医者たちが男の顔を覗き込み、カルテを書いている。
男は特殊な薬を飲まされ、眠らされていた。
自分の一番欲しいものが手に入る夢を見せられた時、人間はどのタイミングで目覚めるのか。
それを確かめる実験だ。
「これは当分起きませんよ」
「かまわんさ」
その部屋には、他にも大勢の人間が眠らされていた。
欲しいものは人により違うし、それによって起きるタイミングは違ってくると予測されたからだ。
ただ、誰もが心地よく眠っている姿を見て、医者たちはだんだん腹が立ってきた。
そのため自分たちも実験台になり、眠ることにした。
結局、誰一人起きる者はなかった。
公開:21/03/28 07:41

ふじのん

歓びは朝とともにやってくる。

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