届け春！

ももいろの幟がずらりと並んで、はたはたと音をたてている。はためく幟に「春風便はじめました」の文字がゆれている。誘われるように中へ入ると、窓口カウンターの上にも小さなももいろの幟が２つ並んで置かれていた。
-あの、これ送ってみたいんですけど。
-春風便ですね。
眼鏡の局員は、長３サイズの封筒を手にとると、中からゆっくりと透明の袋を取り出した。
-この袋に春風を詰めて、送ってくださいね。
-袋につめるんですか。初めてなので、やり方がよくわからないんですが。
-これを使って……。
男性は横の棚から小さな青銅色の鶏のオブジェを取り出した。手のひらにのって、細い足でバランスよく立つ姿が愛らしい。
-春風見鶏っていうんです。いい風が吹くと、バレリーナのピルエットのようにくるくる回りますよ。その時が、春風の集め時ですよ。
-外国にも送れるんですか。
-はい、ただ最近は検疫が厳しくなっているようですよ。