ポニーテールのバク

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異論は認めない。十代の男子はポニーテールが好きだ。「うなじ」などという単語も知らないくせに、揺れる毛束と涼やかな首筋に心掴まれる。

そこを狙ったのが一匹のバク。俺もポニーテールにすれば少年たちが食いついてくる。彼らの、あんな空想やこんな妄想を腹いっぱい食えるはず。

バクは毛を伸ばし始めた。

ポニーテールを結うまでに2年かかった。せっかくだからとエルメスのスカーフで結んだ。次はうなじだ。バリカンを使い、首まわりを剃った。おくれ毛を残しておくことは忘れなかった。出来上がった姿を鏡に映し、思った。

何かが違う。

鏡を見つめながら、少年たちを誘き寄せ腹いっぱい夢を食う、そんな日々を思い描いた。

そこにもう一匹のバクがやって来た。「なんだ、うまそうな夢があるじゃないか」
夢を食べられ、ポニーテールのバクにはエルメスのスカーフだけが残った。

バクは泣いた。ローンがあと9回残っていた。
その他
公開:21/03/26 15:19
更新:21/03/26 15:24

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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