花、推す

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散歩中、浮かんだ句を帳面に留め、我ながらまずまずと自賛していた。
「まずい出来だこと」
だしぬけに横から笑う声。
人の書き物を勝手に覗き、挨拶もなく『まずい』とは失敬な。おまけに舌足らずな子供である。少々躾けてやらねばと声の方へ向く。
「いいかねお嬢ちゃん……」
「まずいからまずいと言ったのよ、坊や」
目線やや上、ほころびかけた山茶花の蕾が、ふるりと笑った。
腹話術?辺りを見回せど、私と山茶花の他に誰の姿もない。
「坊やこそ、大先輩に『お嬢ちゃん』は失礼じゃなくて?」
どちらが失礼だ。理不尽感は拭えないが、花相手に論争など、老害を通り越して呆けたと思われかねない。早々に立ち去ろうと句帳を畳む。
「ほら、ちょっと貸して」
またも勝手に枝が句帳を奪い、ぱらぱら捲っては撥ねていく。一つか二つ、頷く様に蕾を捺した。
「これが良いわ。私のお墨付き」
紅色の花押が付いたのは、予想通り山茶花の句だった。
ファンタジー
公開:21/03/25 15:52
散歩道で見た シーズン4-① 花押(かおう)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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選集『花神の庭』
詩集『君に伝えたかったんだ。』

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第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版

いつも本当に、ありがとうございます!

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