合言葉は

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「明夫! ちゃんと話を聞く。だから籠城するのを止めてくれ」
「遅かったな、勇二」
小学生の頃からずっと知っている自分なら、説得出来ると自惚れていたのかもしれない。刑事としての経験の少なさと責任の重さに焦りを感じていた。
「人質の中には幼い子供もいるだろう。子供だけでも解放してくれないか」
「ーーお前は子供の頃から正論ばかりだったな。その言葉が相手を追い詰めている事も知らずに。口先だけの正義が彼女を殺したんだよ」
「な、何の事だ」
刑事達が鋭い目で自分の事を見たのが分かった。
「合言葉、覚えてるか」
秘密基地の合言葉である事はすぐに思い立った。
「それ言ってみろ。合ってたら、降参してやる。自力で思い出せ。」
クラスメイトのあ行からわ行までの全員の名前だ。
「何でそんな事」
「交番勤務の時、お前は彼女に何を言った? クラスメイトだったのに」
ぼんやりとした女が明夫の後ろに立った。
青春
公開:21/03/24 19:07

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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