予定表を書く龍

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日本の上空には、小さな龍がいた。
龍の仕事は天気の管理、特に雨は得意分野だ。
予定表はいつも完璧だった。

龍はとても真面目なので、
作物は良く育ち、空気は澄み渡るよう
巡る季節に豊かな雨をもたらせた。

春には春驟雨、柔らかく暖かい雨を
夏の五月雨、中秋の名月には悪戯をして雨月を楽しんだ。
ある冬の日、子供の作ったてるてる坊主を見て、
夜に小雨時雨を降らせた。
これでお出かけ出来るだろうと喜んだ。

最近、龍は眠気を覚えるようになった。
ちょっと暖かすぎる。
うたた寝のつもりが
随分寝てしまった。
龍はぼんやりと空の下に目を落とすと
恐れおののいた。
「日本が水浸しになってる!!」
すでに甚大な被害が広がっていた。

龍は泣いた、ワンワン泣いた。
悲しくて悔しくて申し訳けなくて泣いた。
その涙がまた雨となり、日本に降り注ぐ。

「誰か、空を冷やして僕の頭を冷やしてほしい」
ファンタジー
公開:21/03/24 18:13
更新:21/03/24 18:14

翡翠工房( 石川県 )

時の栞・翡翠工房(かわせみこうぼう)

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