墓参り
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その人は毎月五日に墓参りに来る。手押車に支えられながら、ゆっくりとスロープを上り寺の門を抜ける。
質素な身なり。どんなに暑い日でも上着を羽織っている。薄化粧。白髪をきちんと後ろでまとめ、腕輪のように左手首には水晶の数珠。
それだけなら別段気にも止めなかっただろう。気になるのには理由がある。
彼女がお参りするのは隅にある、無縁仏を合祀した墓なのだ。
埋葬後わかった身内だろうか。それとも葬る力がなくて託したのか。
合祀墓の前で手を合わせる彼女に思い切って声をかけた。
「お身内の方がこちらに?」
彼女はふわりと笑って頷いた。
合祀されればいまさらお骨は取り出せない。気の毒に。なにか慰めの言葉をと思っているうちに彼女は言った。
「私もいずれこちらに入る身ですから。ここにいらっしゃる方々は、身内みたいなものでしょう?」
カタカタと車輪の音をさせながら遠ざかっていく彼女に、我知らず手を合わせた。
質素な身なり。どんなに暑い日でも上着を羽織っている。薄化粧。白髪をきちんと後ろでまとめ、腕輪のように左手首には水晶の数珠。
それだけなら別段気にも止めなかっただろう。気になるのには理由がある。
彼女がお参りするのは隅にある、無縁仏を合祀した墓なのだ。
埋葬後わかった身内だろうか。それとも葬る力がなくて託したのか。
合祀墓の前で手を合わせる彼女に思い切って声をかけた。
「お身内の方がこちらに?」
彼女はふわりと笑って頷いた。
合祀されればいまさらお骨は取り出せない。気の毒に。なにか慰めの言葉をと思っているうちに彼女は言った。
「私もいずれこちらに入る身ですから。ここにいらっしゃる方々は、身内みたいなものでしょう?」
カタカタと車輪の音をさせながら遠ざかっていく彼女に、我知らず手を合わせた。
その他
公開:21/03/22 14:21
更新:21/11/26 11:23
更新:21/11/26 11:23
ボケ防止にショートショートを作ります
第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。
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