野球の神様

球春到来。甲子園で選抜高校野球大会が始まった。
この時期になると野球の神様は、甲子園に棲むという魔物に悩まされる。試合中に浜風が吹き、打球が変わってエラーが生じるのも、思わぬ大逆転劇が起こるのも魔物のせいだ。
だが、実況中継するアナウンサーや負けた野球部の監督らから「野球の神様は気まぐれだ」と言われてしまい、悪いのは野球の神様のようになってしまう。
そこで野球の神様は、魔物を甲子園から追い払い、天界の牢屋に閉じ込めることにした。大会が開幕してみると、試合中に浜風が吹かず、エラーも大逆転劇もなくなった。
今度は、甲子園の観客から試合が面白くなくなったとの不満が噴出した。
堪り兼ねた野球の神様は、再び魔物を甲子園に解き放った。甲子園では、数多くのドラマや感動が生まれるようになった。
ところが、新型コロナウイルスの影響で甲子園が観客制限になってしまった。これには野球の神様も拱手傍観するしかない。