桜に紅茶。

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ヘッドフォンを愛読書に繋ぐと、ヴォンと重低音がして音が通ったことを伝えた。間があってから彼女の大きな声で「“ご飯?今本読んでるからあとでー”」と聞こえてきた。「“もう!勝手に部屋入ってこないでよ”」僕の前でより子供っぽい口調が、くすぐったい。「“私だって小説読むもん!図書館で借りたの!”」本の裏を咄嗟に確認する。ヘッドフォンに繋がったそれは確かに僕の本だった。紅茶をこぼして頗る落ち込んだのは、彼女にこの本を貸す前の出来事だった。
素直じゃあない彼女に堪えられず口元をおさえた。今は一人だけれど、見せられたものではなく口元が緩んだから。
ヘッドフォンの奥でざりざり音がして音量が変わる訳でもないのに耳を寄せた。
小さな声がした。
「“会いたい”」
素直な彼女に堪えられず目元をおさえた。今は独りだけれど、見せられたものではなく涙があふれたから。
「会いたい」
どこにいたのか桜の花が僕の腕に触れた。
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公開:21/03/20 23:58

真月。

ご覧いただき ありがとうございます。
よろしかったら読んでみてください。
作品の絵も自身で描いております。

コメントや☆など とてもありがたく思っております。ありがとうございます。
のほんとしたお話や癒しとなっていただけるようなお話を描けたらと思っております。

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