タペス鳥

この村にある湖は多くの渡り鳥が利用する。
それ程大きくない湖。種類の違う渡り鳥同士が湖で肩を寄せ合い、羽を休める姿はここでしか見れない。
私はその姿が大好きだ。湖がまるで巨大なタペストリーようだとつい写真に収めてしまう。
渡り鳥達はもしかしたら撮られているのを意識しているのかもしれない。私がカメラを向ける方向が尤もタペストリーが美しく見える位置なのだから。
私はここに訪れる渡り鳥達をタペス鳥と名付けた。
空に飛び立つ瞬間はまるでタペストリーが空に舞い上がり、糸が解けていく様だ。まさに渡り鳥という自然が生んだ芸術である。
だが、そんな芸術を汚そうとする輩もいる。
ハンターや猟師、自然保護を謳う者達だ。彼らは平然とタペス鳥の群れに穴を開ける。
虫食いのように穴の開いたタペス鳥。だが心配はいらない。
渡り鳥達は空いた穴を襲撃者の血と肉で埋める。
それを行うは復鷲、もしくは鷲復と呼ばれる鷲である。