くさいラーメン

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辺りに立ち込めた臭気に思わず鼻と口を塞いだ。佐々木に連れてこられた山の上のラーメン屋には行列が出来ていた。足を怪我して松葉杖をつく人や、腕を包帯で巻いた人ばかりだ。
「どうやって登ってきたんだよ」
「反対側にリフトがあるんだよ。良い運動になったろ」とそっぽを向いたが、風向きを気にしただけらしく激しくむせた。
店主はガスマスクを装着して鍋をかき回し、客は皆鼻栓を付けてラーメンをすすっている。先程の松葉杖の男が「治った」と叫び松葉杖を真っ二つに折った。
「ヤられるぞ。鼻栓しろ」
白濁したスープに麺が入ってるだけのシンプルすぎるラーメンだった。鼻栓のせいか全く味が分からない。ただ、力がみなぎってくるようだ。スープを飲んでいると先に食べ終わって外に出た佐々木が足を引きずって戻ってきた。ハンモックに飛び乗ろうとして失敗したらしい。
「もう一杯食べれば治るさ」
佐々木が臭いゲップをした。
ファンタジー
公開:21/03/18 19:49
夫からのお題 キーワード らーめん屋 臭い 店主が怖い 狭い

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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