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駅でばったり、専門学校時代の友人に出くわした。七年ぶり。
「変わんねえなあ」
「お前がね」

日曜の夜、約束の場所へ赴くと、同期の三人は既にいい塩梅で談笑中だった。懐かしい顔ぶれ。
僕は遅刻を侘びてから空いている場所に腰を落ち着け、やってきた店員に麦茶を一杯注文する。
「なんだよ、飲まないの?」
「この後もお仕事ー」
「え、何の仕事?」
「変わらずアシだよ」
彼らは互いに顔を見合わせた。仲間のひとりが言った。
「まだ描いてるのか?」

なんとなく気まずい雰囲気の中、皆運ばれてきた料理を黙々と口へ運ぶ。
「まだ、夢を見てるの?」
沈黙を破り、仲間の一人が訊いた。ネギチャーシューを咀嚼しながら、僕は彼を見返して何度か瞬く。
みんな、普通のサラリーマンになっていた。二人は営業、一人はITエンジニアに転身したらしい。
麦茶を飲む。

彼らの判断は間違っていない。僕はただ……、
「好きなだけだよ」
青春
公開:21/03/19 03:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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