天使との別れ

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天使がいた。
柔和な優しさで人を不幸にしてしまうような天使だった。
彼は触れる指でそっと傷を癒したが力が抜ける度に羽が軽くなっていくのを感じた。
癒された人は最初は喜んでみせた。しかし、それが当たり前になってくると厚かましい態度を見せ始める。



天使は傷ついた。
何よりも自分が行った事が正しくないと認めるのが怖かったから。それでも彼は人を癒し続けた。
やがて軽くなった羽で再び天界へ帰る日がきた。徳を積み続けたご褒美だと喜んだが同時に別れを惜しむ。



子をなせない身の彼には沢山の孤児との繋がりがあった。
成長を見守りながら親とはこういうものかと人に近づいてゆく自分を嬉しく感じた。
ただ彼にも癒せない人達がいた。
過去にしがらみを持った人達だ。
彼らは自分たちを癒やせない天使を憎でいた。
別れ際に天使は一言だけ伝える。


「悪魔はいない。そこにあるのは悲しみに囚われた心だけです」と。
ファンタジー
公開:21/03/18 10:42
更新:21/03/18 10:45

水鏡かけら( 日本 )

執筆のリハビリがてらに、書いております。
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