カスタネットマン

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僕の働くコンビニには、毎日やって来る面倒な客がいる。
仲間内で「カスタネットマン」と呼ばれているその珍客は、言葉を一切使わず、カスタネットの音だけでコミュニケーションをとろうとする。
最初の頃は意味不明だったが、「タン」がYesで、「タタン」がNoだと判明してからは、次第に意思の疎通がはかれるようになってきた。
今では「タタ、タタッタタン」が「ファミチキ」だということも解読できている。

ある日、テロの立てこもり事件が発生した。
テレビ中継を見ていると、驚いたことに人質の中に彼がいた。
必死にカスタネットを叩いて何かを訴えている。
僕は警察署に駆け込んだ。
「人質は全員3Fの応接室にいます!夕方5時には裏口が手薄になるそうです!」
僕の情報を元に警察が突入して、事件は無事に解決した。
解放された彼は無表情にカスタネットを激しく乱打した。

僕にはわかる。
君の「ありがとう」ってメッセージ。
その他
公開:21/03/18 07:11

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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