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電話の呼出音が鳴った。
世にも奇妙な物語のテーマ。

「あたし、サリーさん」
スピーカーモードにしたスマホを机の上に置いたまま、僕は黙って続きを書く。今日中に一作、仕上げなくてはならない。忙しいのだ。

「……メリーさん? うん?」
僕は目を閉じたまま頭を振った。

「聴こえてるんでしょう。私いま、派出所の前にいるの」
「それじゃ両さんだよ」
思わず突っ込んでしまった。キャハ、という笑い声。
「聴こえてるんじゃーん」

ぷつり、と通話が途切れる。少しすると地面がぐらぐらと揺れだした。僕は作業を続けるのを諦めて伸びをし、こった首をこきこきと鳴らした。

うーん、ともう一度大きく腕を伸ばして体を反らせると、ばりばりばりという無神経な音とともに、屋根裏部屋ごと天井が吹き飛んでいった。

「いま、あなたの真上にいるの」
「見えてるよ」

系外惑星まで逃げてきたのに、実にしつこいストーカーだ。
その他
公開:21/03/17 00:05

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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