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午前0時。Fは閉店時間を迎えた飲み屋を追い出され、ふらついていた。帰ってもやることはない。暇で仕方がなかった。
すると、前から男が全力で走ってきた。思わず声をかける。
「あの、どうしたんですか」
「悪いけど急いでいるんだ」
「何をそんなに焦っているんですか」
「奴に会うんだよ」
「奴?」
「そう、奴にね。失礼するよ」
奴って誰だ?Fは走り去る男を呆然と眺めていた。焦ってはいたが、会うのが待ちきれない、そんな表情も見えた。よほど大事な待ち合わせなんだろう。俺にもそんな人がいたらな。なんともいえない劣等感が、心に生まれた。
待てよ。俺にもそういう「奴」がいたんじゃないか?
Fは歩き始めた。暇をしている場合ではない。俺も奴に会わなければ。道中で声をかけられたら。こんな時間に1人でふらついている、寂しい人間に会ったら。「奴に会う」と言ってやるのだ。
Fは走り出し、やがて見えなくなった。
すると、前から男が全力で走ってきた。思わず声をかける。
「あの、どうしたんですか」
「悪いけど急いでいるんだ」
「何をそんなに焦っているんですか」
「奴に会うんだよ」
「奴?」
「そう、奴にね。失礼するよ」
奴って誰だ?Fは走り去る男を呆然と眺めていた。焦ってはいたが、会うのが待ちきれない、そんな表情も見えた。よほど大事な待ち合わせなんだろう。俺にもそんな人がいたらな。なんともいえない劣等感が、心に生まれた。
待てよ。俺にもそういう「奴」がいたんじゃないか?
Fは歩き始めた。暇をしている場合ではない。俺も奴に会わなければ。道中で声をかけられたら。こんな時間に1人でふらついている、寂しい人間に会ったら。「奴に会う」と言ってやるのだ。
Fは走り出し、やがて見えなくなった。
その他
公開:21/03/16 19:30
ばおといいます!よろしくお願いします。
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