嵐の夜の現象

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暴風雨の夜。部屋は水槽の中のように静かだ。ガラス一枚隔てた先より、嵐はずっと遠くに感じて、何となく立ち上がる。
窓を開けた。雨、木の葉、ざわめき。風が音を立てて体をなぶる。空に巻き上げられそうで、窓枠を掴む。一瞬でびしょ濡れになった。
外は暗くて何も見えない。
突然フラッシュが起きた。空気が震えた。地響きが、耳と全身を撃つ。
雷だ。音って振動なんだと、少し痺れた頭で思う。
雨に濡れているのに、体が熱い。鼓動が速くなる。
体の熱が背中の上部へ集中する。ふらりと、窓に身を乗り出した。肩甲骨がざわりと疼く。足を、窓枠にかける。背中で熱が一気に凝縮する。窓枠を、蹴った。
ばさりと音を立て、服を突き破った肩甲骨が、体の左右に広がった。腕よりも長いそれを振り下ろす。飛沫のような雨に逆らいながら、体は上空へと押し上げられた。

翌日、多数の失踪者が出た。また近辺では巨大な鳥の様なものが目撃されたという。
ファンタジー
公開:21/03/16 19:04

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