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路地裏の目立たぬ店舗だが来客は途切れない。
中には勘違いで来る客も少なくない。
「買い取ってください」
反物をカウンターに置いた女性に店主は言った。
「ここは質屋じゃないんです。贄屋です」
「にえ…?」
「物じゃなく、貴方の何かならば贄として預かる事ができます」
何か、と女性は呟いた。
「例えば昨日の客は『色』を捧げていきました。声や音なんてもの可能です。ただし…」
店主は咳払いをした。
「生贄はご遠慮しております」
女性は苦悶し「では私も色を」と答えた。
店主は目を瞑るように促すと飴色の小瓶を頬にあてがった。
すると虹色の涙がこぼれ落ち瓶に吸い込まれていった。
目を開け絶句する女性に店主は封筒を渡した。
「足りなければ他にも預かりますが」
女性は無言で頭を振り、白黒の世界へと飛び出していった。

「大丈夫だ。あの調子じゃすぐに迎えに来てくれそうだ」
店主は手の中の瓶に語りかけた。
SF
公開:21/03/16 13:57

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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