真夜中2時のラブソング

0
1

恋人が死んでしまった。

売れないミュージシャンだった。

オーディションは落ちてばかり。

路上ライブを開いてばかり。

その路上ライブでも、私だけが唯一の客だった。

周囲には反対されたお付き合いだった。

「現実を見ろ」と何度も言われた。

でも、どちらを向いても彼がいたから。

彼が、私の「現実」だった。

売れないミュージシャンだった。

だからいつも、私に歌を歌ってくれていた。

世界に一人の私の為だけに

彼はラブソングを歌ってくれた。

真夜中2時に、彼の形見のギターを持って

私は公園にやって来た。

歌詞は、彼が歌っていたのを聞いて覚えた。

弾き方は、彼に何度も教えてもらった。

誰もいない公園で、私は今日も歌を歌う。

これは、真夜中2時のラブソング。

彼がくれた、ラブソング。



誰もいない公園で歌い終えると。
「俺より上手いな」って、声が聞こえた気がした。
恋愛
公開:21/03/16 11:13

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容