プロレス観戦

プロレスを観るなら最前列に限る。
リングでの荒い息遣いが聞こえるこの距離感がいい。
おっと、マスク・ザ・サンダーが場外に投げ飛ばされてきたぞ！
フェンスに激しくぶつかった！
目を覚ましてくれ、マスク・ザ・サンダー！
まさか失神してしまったのか！？
くっ仕方がない…！
私は巣鴨のショップで買ったマスク・ザ・サンダーのマスクを被った。
素人の私でも少しの時間稼ぎくらいはできるさ。
「かかってこいやぁ！」
私は雄叫びを上げてリングの上に躍り出た。
「誰だ、お前は！」
「お、俺はマスク・ザ・サンダー、どう見ても本物だ！くらえー、本物のサンダーチョップ！」
「ざけんじゃねえ！」
ドンッと私はリング外に弾き飛ばされた。
だが大きな腕がそんな私を受け止める。
「待たせたな！」
マスク・ザ・サンダー！？
私は笑みを浮かべてタッチを交わしながら失神する。
…などという妄想をしつつ私はいつも観戦している。