見えなくて良かった

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 僕には霊感が無い。だが僕の従姉妹はかなり強いらしい。
 これは僕が16歳になるかならないかの頃、約一年ぶりにその従姉妹と会った時の話だ。
 いつもの彼女は僕を笑顔で迎えてくれるのだが、その日は玄関で会うと急に怪訝な面持ちなり、黙って僕の頭の上に視線を向けた。僕は不安になって「どうしたの?」と尋く。
 すると彼女は「それは橋の前の角に立ってた奴だ」と囁いた。その言葉は僕に話しているというより、明らかに独り言のように聞こえた。
 不安になって僕は「角に立ってた奴って?」と聞き返した。
 だが彼女は僕の質問を無視して「あっち行きなよ」と言って、僕の頭の上を何度か手で払った。
 それから彼女は僕とは逆の方向をじっと見つめていたが、しばらくすると「もう大丈夫」と言っていつもの彼女に戻った。
 その時頭の上に何が居たのか、僕は今でも聞いていない。でも、その時は心底霊感なんて無くて良かったと思った。
ホラー
公開:21/03/16 00:54
霊感が無い 従姉妹 取り憑かれる

Azuki Smith( 横浜 )

写真撮影が趣味で、英国文学をはじめとした外国文学が好きな会社員
旅が好きでヨーロッパとアジアを中心に多く国を旅している
また、イギリスに住んでいたこともあり、英国文学に多くの影響を受けている
喋れる言語は日本語 (ネイティブ) > 英語 (アカデミック) >>...>> ドイツ語 (何とか旅が出来るレベル)

投稿内容はその他(主に紀行文)、青春、ホラー、ごく稀に恋愛(でも悲しい物語)

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