12
5
丘の上の古城にはのっぺらぼうが住んでいて、子供を攫っては夜な夜な顔をはいでいるらしい。
そんな噂のおかげで、日が沈むと誰も、麓の森には近づかなかった。
「顔をはいでどうするの?」
「自分の顔に貼り付けるのさ。だけどうまくいかない。なにせ見えないし、聴こえないし、臭わないからね。だから何度も何度も子供を攫って顔をはいで、城の廊下は子供たちの顔でいっぱいなんだ。奴がときどきそいつを踏んづけて転ぶと、叫び声を上げる」
夕闇に紛れてときどき響き渡る甲高い声を聴くと、僕たちは皆身を震わせた。当時は行方不明になる子供も少なくなかったからね。
それでも子供というのは、好奇心と勇気(または無謀)の塊で、あるとき僕たちは大人の隙を突いて森へと忍び入った。
真実はまあ知っての通り、大人たちの秘密のパーティ、だったんだけど、僕たちは確かに見たんだ。
酩酊した大人がひとり、森の奥に連れ去られていくのを。
そんな噂のおかげで、日が沈むと誰も、麓の森には近づかなかった。
「顔をはいでどうするの?」
「自分の顔に貼り付けるのさ。だけどうまくいかない。なにせ見えないし、聴こえないし、臭わないからね。だから何度も何度も子供を攫って顔をはいで、城の廊下は子供たちの顔でいっぱいなんだ。奴がときどきそいつを踏んづけて転ぶと、叫び声を上げる」
夕闇に紛れてときどき響き渡る甲高い声を聴くと、僕たちは皆身を震わせた。当時は行方不明になる子供も少なくなかったからね。
それでも子供というのは、好奇心と勇気(または無謀)の塊で、あるとき僕たちは大人の隙を突いて森へと忍び入った。
真実はまあ知っての通り、大人たちの秘密のパーティ、だったんだけど、僕たちは確かに見たんだ。
酩酊した大人がひとり、森の奥に連れ去られていくのを。
ミステリー・推理
公開:21/03/13 23:00
さまようアラフォー主夫
ログインするとコメントを投稿できます