架空の仕事

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『僕のお爺ちゃん、天国からの手紙を受け取る仕事をしているんだ』
そう話すと、嘘を吐くな!と皆に言われる。嘘じゃないのに…
「仕方ないさ。儂の仕事は架空の仕事だからな」
架空の仕事?
「存在しない仕事って意味さ」
じゃあ、爺ちゃんは嘘をついているの?
「いいや、嘘はついておらん。丁度いい、仕事の時間だ。ついてこい」
爺ちゃんは長い竹梯子を庭に立てる。寄りかかるものも、押さえている人もいないのに竹梯子は直立を続ける。
爺ちゃんは竹梯子をするすると登っていくと天辺で手を伸ばし、何かを掴んで戻って来る。
「ほら、天国からの手紙だ。いいか、架空って言葉はな、存在しないって意味と同時に、何もない空中に架け渡すって意味もあるんだ。儂はそこからこうやって手紙を受け取る仕事をしとるのさ」
何でそんな事出来るの?
「そりゃ、儂も歳だからな…天国に近づいているんだよ」
空を見つめる爺ちゃんは困ったように呟いた。
ファンタジー
公開:21/03/13 20:17
はしごのり

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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