指輪

1
2

飲み会で初めて会った彼は、両手に大振りの指輪をいくつかつけた男だった。7つ上とは思えないほど気さくで、落ち着いた人。随分と飲んだ後、帰りのタクシーが一緒になった。

笑い話をしながら、静かな街が通り過ぎていく。自然と左手が私の右手に重なる。何も言わずに繋がる手。時折指が手の甲を撫でる。一度手を離すと、指を絡め、まるで恋人がするような繋ぎ方に変わる。彼の指輪の冷たさが段々と消えていく。その時初めて気づいた、いくつもつけられた指輪の中で、ひとつだけ細めな、小ぶりの指輪。それは薬指につけられていた。

「二日酔いにならないように、水飲むんだよ。また飲みに行こう。」

そう言って彼は先にタクシーを降りた。自分の部屋についてから、彼からの連絡が入っていることに気づく。しかし、私はそこに少しの罪悪感を感じ、スタンプを1つ送り眠った。
恋愛
公開:21/03/14 20:55

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容