時間のつぼみ

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勇気を振り絞って告白して…フラれた。
その日はどうやって家に帰ったか覚えていない。
涙は流れなかった。その代わり眠る事も出来ず、暗い部屋で膝を抱えずっと座り込む。
そうしていると、目の前に如雨露を持った小人が現れた。ついに幻覚まで見え始めたか…
「おい、お前!いつまでそうしているつもりだ!早く涙を流せ!」
ずいっと如雨露を押し付けてくる。何だコイツ…幻覚のくせに生意気だ。
「お前が涙一つ流さないから時間が止まったままなんだよ!早く時間を動かせ!」
私が涙を流す事と時間が止まっている事に何の関係があるんだ?
「涙は時間のつぼみを咲かせる唯一の水だ。時間は咲かないと進まない。お前がそれを出さないから困っているんだよ!」
無茶苦茶な言い分だ。でもそれに笑ってしまう。
いいよ。じゃあ、久しぶりに泣いてあげる。

涙を回収した小人は嬉しそうに去っていく。
時計を見れば、まだ1時間も経っていなかった。
公開:21/01/05 20:16

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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