パングライダー

　『菓子パン王国』の絵本を開くと、風がビュービュー吹いてきた。パンの香ばしい匂い。眼下には菓子パンの世界が一面に広がっている。僕はパングライダーコンテストに参加したんだ。パングライダーはパンで造ったハングライダーだ。
　僕は絵本の世界へ飛び込んだ。
　美味しそうな菓子パンのビル群、ドーム球場、タワー、遊園地、城、家、飛行機、車……。
　ほかの参加者も飛んできた。
　ゴールは菓子パン宮殿の庭園にある着陸ポイントだ。
　容赦ない太陽。焦げないように着陸しなければならない。審査の対象になるからだ。パンを狙うカラスやタカがいないので安心して飛行できる。
　焼き加減はちょうどいい。この競技に優勝すれば、王様から菓子パン王国フリーパス券が貰える。菓子パン食べ放題なんだ。
　僕は優勝した。
　でも三日で飽きちゃった。
　和食が恋しくなったんだ。
「遠慮するな少年」と王様。
「王様、もうお腹パンパンです」