我が世誰そ 常ならん

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首都高を疾走するセンチュリーの後部座席。スモークのかかった車窓から夜景を見やる。鈍色の街に燦々と燃える篝火のようなオレンジが一筋。見上げるも宵闇に星は見えない。

私は敗北を知らない。生まれてからずっと。だ。
願えば叶った。全てが手に入った。

父は言った。
「お前は選ばれた人間だ」
母は言った。
「あなたは人の上に立ちなさい」

願えば、人が、金が、時代が、国が動く。思いのままに。

「全部お前のせいだ!」
車を降りたところで、暴漢が銃を私に向けた。何か叫ぶと、唾を飛ばし、顔を赤くして引き金を引いた。しかし私は動じない。

ここで私は死なない。私が死を願っていないのだから。

「総理こちらへ」

護衛の刑事に促される。

背中越しに銃声が鳴る。刑事が暴漢を射殺したのだろう。見ずともわかった。私が、そう願ったのだから。

今日もあいも変わらず、世界は私のために回っている。
その他
公開:21/01/05 11:55
更新:21/01/05 11:59
いろは唄シリーズ② 是生滅法 わかよたれそつねならむ 我らが生きる世で 誰が変わらずに 生きられるだろうか?

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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