よくあること。警官は思った。

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 自殺した浮浪者の遺体を検分する際、警官は浮浪者の財布に挟まっていた手紙を見つけた。表紙には『この手紙をどうか、妻の元へ届けて欲しい』とあった。警官は手紙を開いた。


『僕は最低だ。傲慢だ。何もいらない。何もいらないと誓った。今も、未来も、過去も、夢も、星空も、花房も、聖書も、賛美歌も、いらない。神様なんていないのだから。だから、春の桜も、夏の太陽も、秋の紅葉も、冬の雪原も、何もかも、いらない。捨てちまったんだ。
 僕は最低だ。最低なヤツだ。けれど、信じて欲しい。僕は、キミが居てくれるだけで幸せだった。それ以外は何も欲しなかったことを。どうか、どうか信じて欲しい。心から、愛している。それだけは、信じて欲しい……』


「ウジ虫が…ホームレスの分際で俺に願い事なンかすンじゃあねえよ…」
 警官は財布に残っていた3千円と小銭をポケットに押し込むと、手紙をビリビリに破きゴミ箱に放り捨てた……。
その他
公開:21/01/05 10:18
ノンフィクション 新年初

Sees

ショートショート好き。
得意ジャンルはホラー。
座右の銘は『清く正しくいやらしく』。
好きな書籍は『悪魔の辞典』と『悪魔の寓話』。
制限400字という発想に感銘。
コメントとフォローはできるだけ返します。

楽天ブログにて『株式会社SEES』の名でショートショートと短編小説掲載中。
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さて、今日はどんな事件が起きることやら……。



 

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