激痛転移

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 僕たちの部活の監督は時代遅れだ。
「監督、足が痛いです」
「黙れ! 痛いときこそ走るんだよ!」
 筋肉痛の感じではないと訴えるも、返ってくる答えは同じ。
 あるとき、朽ち果てている僕らの元に科学部がやってきた。
「皆、希望を持て。凄い機械を発明した。これを使えば、自分の痛みを人に体感させることができるんだぞ!」
「何だって!」
 僕たちは喜んだ。
「監督、足が痛いです!」
「黙れ!」
「こんな感じの痛みなんですけど……」
 突然監督の顔が痛みで歪んだ。ふくらはぎを押さえて座り込む。
「僕も……」
「私も……」
「俺も……」
 監督は断末魔に似た悲鳴を上げた。
「休もう、皆休んだ方がいいよ! できる練習をやろう!」
「わかりました!」
 僕たちの体を安堵が包んだ。
 痛みがあったら無理をしないこと。
青春
公開:21/01/06 17:40

shomin shinkai( 日本 )

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