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エレベーターの床に何やらウィッグの切れ端みたいな金色の毛束が落ちていた。

頭の中で妄想が膨らむ。
「君が言ってることはまったく論理的じゃないよ! 冷静になって! 話せばきっとわかるから!」
ナミコちゃんはジャックの髪を鷲掴みにし、これでもかというくらいあっちこっちへと引っ張る。ある種の芸術を孕んだ複雑な髪編みの技を1.5倍速の早送りで見せられているかのようだ。彼女はとにかく怒り狂っている。発情期のゴリラも黙り込むくらいに。
哀れジャックは髪の束を引き抜かれ、頭から血を滴らせながらエレベーターを後にする。なんて凄惨な話だろう。

そんなことを考えていると、僕を乗せた鉄の箱はエントランスホールに到着した。

扉が開く。ふさふさな髪が目の前に揺れている。
大きな頭だ。僕の4倍はある。
彼はくるりとこちらを振り向いた。僕はほっと胸を撫で下ろす。

「なんだライオンか」
ジャックは無事だったのだ。
その他
公開:21/01/07 08:00
更新:21/01/06 17:10

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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