身体文法

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草が短く生えそろった丘の上で僕は大の字になって考えてみた。身体の文法を。僕の身体は一つのセンテンス。主語は頭だ。脳かもしれないが。述語は脚かな。手もあるかな。目的語は胸か腹か。補語は上腕、肩、太腿、ふくらはぎ。名詞はたくさんある。例えば目、鼻、耳、顎など。口、唇、舌、指は動詞。髪の毛、皮膚は形容詞。形容動詞は喉、膝、くるぶし。感嘆詞はペニスだろう。足のつま先はピリオドだ。
身体を伸ばしたり曲げたりひねったりして僕は文を書く。
一つの身体では単文しか作れない。
彼女と一緒に複文を作って遊んだころは楽しかった。手をつないだり、走って追いかけたり、抱き合ったり重なったりしていろんな構文を作った。誇張法、反語法、倒置法とか。いろいろ試しているうちに彼女はどこかに行ってしまった。僕はまた単文だ。草のなかの何かが手に触れる。錆びて一端がくるっと曲がった配管の一部分。これはクエスチョンマークだろうか。
その他
公開:21/01/06 16:49

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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