手紙

4
3

1枚、2枚。
手紙を書く。宛先のない、意味の無い手紙だ。
もう何枚目だろうか。
溢れるばかりの想いばかりが募っていく。
初めて貴方と会った時のこと。
何でもない日々の中で、貴方が見せてくれた表情。
書いても書いても、筆が止まることは無い。
読んで欲しい、この想いを受け止めて欲しい、なんて。
私には過ぎた望みだ。
だから、手紙を書く。
宛先も、意味も無い手紙を。

「読ませてくれないの?」
「読ませるものじゃない」
「僕は読みたい」
「気持ち悪いだけ」
「僕はそう思わない」
気を抜けば、手を伸ばされる。
溢れる想いを受け止めようと。
そんなことしなくていい。これは、私が、墓にまで持っていくから。
「なら、僕も墓まで連れてってよ」
大きな手に、手紙を1枚取られる。そして、彼は手紙に何かを書き込んだ。
「君の想いと一緒に」
差し出された手紙の宛先は、私宛。

「僕も君と同じだからさ」
恋愛
公開:21/01/06 09:37

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容