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山道のわきに、茅葺屋根がみえる。壁はなく、4本の古びた木の柱に支えられたそのまん中には、水盤と柄杓が置いてある。お清め、してみるか。そう思って近づくと、水盤の水は枯れ、かわりに落ち葉がどっさりと積もっていて、中に白いものが3つ4つ混ざっていた。蝶?それは、蝶の形に切られた白い和紙だった。よっ。柄杓でそれを掬ってみる。その昔、水のない場所では、草木の葉や花で手をこすってお清めをしていたという。掬った蝶を手に受けてこすってみる。それから?蝶を捨てるのはなんだか忍びなくて、2つにたたんでポケットにしまった。
山道を進むと、曇り空からぽつりぽつりと雨が降り出した。のぼるにつれて、雨は雪にかわった。ふわり、ふわり。軽い小さな塊が頭や肩に落ちてくる。灰色に見えた枯れ木が、雪で白く変わってゆく。ひらひらひら。雪にまざって、平たい影が揺れている。ポケットに手をやると、たたんだ蝶が消えていた。
公開:21/01/06 04:17

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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