R税

国会でR税の導入が議論されている。
仮想現実、VRは当初の使用目的、娯楽の範疇を抜け出し、あらゆることがその中で完結するようになった。
仕事のやり取りは総てネットで行われ、VRを通して「対面」するのも今や当たり前である。
投手が投げる動作をすると、打者はセンサーの埋め込まれたバットを振る。白球の映像がフェンスの向こうに消えると、グラウンドレベルで見ている観客から投げ銭が飛び交う。
富士山に登山客などいない。登山靴を履き大きなリュックを背負って専用のルームランナーを歩く。山頂でビールを飲み、そのまま暖かい部屋で眠ることだってできる。

こうなると国が目をつけないわけはない。皆VR内で事足りるにも関わらず、現実世界で行動することは嗜好の類である見なし、リアルな空間で生きることに対する税金、それが通称R税だ。

数ヶ月後、国民たちの
「住民税と同じじゃないか」
という声によって法案は否決された。