生きたいなら(逝きたいなら)

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「早くお迎えが来ないかね」
最近の母の口癖だ。
娘としては悲しいが、本人が望むならいっそ叶うといいのかなとも思う。
3ヵ月前、叔母が病死した。
趣味と仕事で人生を楽しんでいたが体は脆かった。
片や母は体が丈夫なのに生きる気力がない。
人生は皮肉だ。
そう思っていた矢先、母が倒れて危篤状態になった。
生死の合間をさまよう母の足元に叔母がいる。
「お母さんを迎えに来たの?」
「そのつもりだったけど、川を渡るのを嫌がってね」
なんだ。口先だけだったのか。
「肉体を他の霊魂に乗っ取られたら、もう生き返れないの。
今回は助けてあげたけど」
「ありがとう。これで軽々しくお迎えなんて言わなくなるかな。
いや、お母さんのことだから3日もすれば元通りかも」
叔母は微笑みながら消えた。
数日後に意識が戻った母はみるみる回復し、何かと忙しくしている。
「心を入れ替えたのね」と言う私に
母は黙って微笑んだ。
その他
公開:21/01/04 00:50
更新:21/01/04 01:16

香霖

初めまして、香霖(かりん)です。
下手な文もイラストも書(描)いてるうちに上手くなると信じて
恥をかき捨てていきます。
常温の眼差しで大目に見て下さると幸いです。
よろしくお願いします。^ ^

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