マニキュア

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散らかった部屋には似合わない、素敵なマニキュアが一本。色は透明。キラキラしたラメに窓から刺す光が反射して、しゅわしゅわと目に痛い。

あの人はとてもおしゃれな人だった。端正な顔立ち、スッと伸びた背筋、程よく筋肉質な身体、何よりもスラッとして骨張った手が好きだった。綺麗な指先に鮮やかな色のマニキュアがよく似合った。

あの人の誕生日に、僕はマニキュアを送りたかった。生憎、色彩センスは持ち合わせていなかったので、ラメの美しいものを買った。

それが今僕の部屋にあるということは当然、その贈り物は失敗したわけなのだが。

そろそろだろう。僕は埃の被ったそれを手に取り、蓋をあける。どろどろに絡め取られたラメを自分の爪にのせる。

中身がなくなる頃にはあの人への気持ちも忘れられているだろうか。

キラキラのマニキュアは、やっぱりあの人にしか似合わないような気がして、僕はすぐにそれを除光液で拭いとった。
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公開:21/01/03 23:15

百瀬

2021/1/3〜
そのへんの高校生です。更新マイペースです。感想書いてくださるととっても嬉しいです。

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