田中正道(まさみち)整形外科を受診する。

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 町の整形外科病院では武本院長がにこやかに聞く。
「今日は朝一で田中君の受診が入ってたね。師長さん準備OK?」
「はい先生。他の方の予約は10時以降にしてますし、院内は昨日から綺麗に掃除してあります」
 新人ナースの山野は首を傾げながら先輩に聞く。
「田中さんって偉い人なんですか? そこまでしてお迎えするなんてちょっと迷惑かも」
 それは武本の耳にも届いた。
「はっはっは。山野さんは初めてか。偉いかと聞かれれば彼は偉いよな、師長さん」
「はい。とても。でもうちのスタッフは誰も迷惑だなんて思わないかな。いつも患者様や私達に親切で、濡れた床をそっと拭いてくれたり。それで受診理由が腰痛なんだから申し訳なくて。いつしか彼の受診時はみんな自主的に準備するようになったのよ」
 目を細め窓の外を見た武本の目が開く。
「しまった! 昨夜は風が強かった」
 そこには庭掃除を終えて汗を拭う田中君の姿があった。
その他
公開:21/01/03 18:50
更新:21/01/04 16:27

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
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