初夢飴

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外側の鼈甲飴を思い切って噛む。
そこから初夢が溢れ出てきて、富士のすばらしい眺望を目に映した。雲が晴れて、目前には山がはっきりと見える。
「お蕎麦を食べて帰りましょうね」
記憶よりも年若な母がそう言って微笑むと、柔らかい感覚に包まれる。夢と現実の境目が曖昧になった。
瞠目して、意識を取り戻す。
「富士山がみえました」
目前には屋台があり、店主が満足気な顔をしている。
「初夢飴ください」
「はいよ。いいの入ってるよ」
隣では、子どもがこの飴を買いにきていた。この子はどんな初夢をみるんだろうか、と胸が高鳴った。
その他
公開:21/01/03 14:34

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