ランナーズハイ

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机の上、筆を走らせる。脳内の映像を文字として表現する為に。
真っ白だった原稿用紙は真っ黒だ。今はただの走り書き。清書する苦労なんて考えない。脳内の映像を余すことなく書き写すにはこれが一番いい方法だから。
カリカリとペンが走る音に高揚してくる。今、最高傑作を生みださんと自覚する。
ふと、声が聞こえた。
机の上に置かれたフィギュアが私に声援を送る。まるで沿道の観客だ。
手を振り返すのも惜しい。私は筆を走らせ続けた。

そうして走り切った後に残ったものは静寂だった。
先程まで感じていた高揚感は微塵もない。ああ…あれはランナーズハイという奴だったのか…
冷静な頭で原稿用紙を見て顔を顰める。ダメだこりゃ…
ハイになって見えないものが見えていたようだ。少し休もう。

と、私が休んでいる間にもランナーズハイ状態が続いていたペンが走り続けた結果、翌日、部屋中が文字で埋め尽くされているのを見て愕然とした。
公開:21/01/04 20:53

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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